廃止間際の夕張線を目指す

停電で真っ暗な札幌駅前

台風の翌日

2018年9月5日、筆者は札幌と函館出張のために羽田空港にいた。前日、近畿地方を縦断して大きな被害をもたらし、その後、日本海を北陸、東北、北海道と沿うように北上していた台風21号。関西国際空港が一時的に孤立したことで記憶している人も多いかもしれない。

前日の夕方から新千歳行きは全便が欠航となっていたが、明けて5日はほぼ通常通りに運行再開、筆者が朝遅い時間に羽田に着いたときには機材繰りのせいか遅延が少し出ている程度になっていた。前日の欠航があった分、キャンセル待ちの乗客で空港はごった返しているのかと思いきや、特に混雑している様子もなく、搭乗予定の便でも空席がまだ残っているほどであった。

そして、これまた羽田 - 新千歳間ではよくあることだが、ファーストクラスも残っており、ちょうどお昼の時間帯に飛ぶ便だったので当日アップグレードをした。
 

新千歳空港の混乱

当初の予定では、5日の午後に札幌で打合せ、6日は終日フリーで函館に移動、7日に函館で打合せ、夕方から北海道新幹線で帰るということになっていた。そして、中日に夕張に行こうと目論んでいたのだ。目的は廃止間際のJR夕張線に乗ること。学生の頃に晩秋の夕張を訪れたときは紅葉に囲まれた圧巻の景色であった。もちろん、当時は鉄道と地元バス以外に交通手段などなかった。その鉄道が廃止されるということで、最後に再訪してみたいと思っていたのだ。

ところが、午後1時頃に新千歳空港に着くと、倒木で架線切断とかでJRがストップしており、運転再開は14時の見込みということであった。午後の予定がずれ込むが、幸い、夜も空いているので、この時点では暢気に展望デッキに出て、JRの再開まで時間を潰そうと思っていた。

新千歳空港


ご覧の写真の通り、千歳の空は少し雲が残るものの、おおむね台風一過の秋晴れという感じであった。

しかし、運転再開直後は混雑しているだろうからと少し余裕を持って、14時半頃に地下のJR乗り場に戻ってみると、まだ運転を再開していない。それどころか、再開予定時刻が未定と状況がむしろ悪化していた。

やむを得ず、1つフロアを上がってリムジンバス乗り場に行ってみると、思った通りの大混雑。まあ、JRが動いていなければバスで行くしかないので、当たり前だが、札幌市内行きなど延々と行列が続いており、どこが先頭でどこが最後尾かも見ただけでは判然としないし、並んだところでいつ乗れるのか見当も付かない状況であった。

どこか比較的行列の短い行き先はないかと探してみたところ、大谷地が10人ほど、真駒内は数人しか並んでいなかった。どちらの路線にどれだけの需要があるのかは分からないが、この状態で数人だけというのは、真駒内行きは出たばかりかもしれないと判断し、大谷地行きの列に並んだ。どちらにしても札幌市営地下鉄の駅に行けるし、乗り場は隣り合っているので、先に真駒内行きが来ても行列が短ければ、臨機応変に動けるかもしれないと考えていた。

バス待ちの行列で混雑する新千歳空港


どちらも行列は少しずつ伸びていったが、札幌駅方面行きの大混乱とは比較にならない。そして待つこと30分あまり、先にやって来たのは真駒内行きであった。バスは普通の大型リムジンバス、どう見ても満席になるとは思えない行列。とっさに動いて真駒内行きに飛び乗った。

途中の沿道ではあちらこちらに倒木があり、北海道では明け方にかけて通過していった台風の爪痕が残っていた。高速道路を降りてからの道のりも長いようで、1時間ほどかけて真駒内駅に到着。そこから地下鉄でさっぽろに行き、駅前のホテルにチェックインしたときには6時近くになっていた。

ただ、この時点では翌日の予定を変更して、午前中に打合せ、午後、夕張経由で函館へ移動と大枠に変更はなく、翌日は朝から通常運転の予定であると札幌駅で確認もしていた。夕食にジンギスカンを囲んで、空港からのバスは大谷地の方が高速を降りてからの距離が圧倒的に短いので、15分や20分ぐらい余計に待っても早かったかもしれませんねなどと、地元の人の話を聞いたりしていた。
 

北海道胆振東部地震

その日の夜、ホテルで眠っていると突然の揺れに起こされた。ホテルの上層階だったので揺れが増幅されたのか、ベッドにしがみついていないと振り落とされそうな程で、真っ暗な部屋の中で揺れが収まるのをしばらく待っていた。本震が終わって外の様子をうかがうと目立った混乱もなく、テレビをつけて情報収集しながら、家族などにとりあえず無事を伝えるSMSを送る。札幌市内の震度は5弱から強。

このような大きい地震があった場合、鉄道は線路や路盤の安全確認を行わないといけないので、明日一日は動けないかなとなど考えながら、時折余震も来て落ち着かないので、ベッドの上に座ってノートパソコンを開いてみていると、突然、パソコン以外が真っ暗になった。停電である。

窓から見渡す限り、札幌駅周辺は全て真っ暗であったが、まさか、これがこの後24時間以上も続く大規模停電だとは知る由もなかったが(何しろ、テレビもつかないのだ)、とりあえず、無駄にパソコンやスマホのバッテリー残量を消費するのはやめようと、もう一度寝ることにした。
 

帰路の確保に四苦八苦

翌朝、停電からは復旧していなかったが、ビルの自家発電で非常灯、エレベーター1基、ホテルロビーの通電が確保されていた。そこのテレビやネットから飛び込んでくるのは、地震の規模の大きさと被害の甚大さを知らせるニュースばかり。

新千歳空港は閉鎖されて全便欠航、JR北海道も全線で運転見合わせ。札幌駅で確認しても写真の通りであった。これは今日中に札幌を出るのは困難と判断して、午前中にホテルに延泊をお願いし、コンビニで飲料水と調理不要の食べ物を念のため二日分ほど調達。

札幌駅の列車運休の案内


夕方になっても状況は改善せず、新千歳空港はターミナルビルに被害が出ているだとか、JRも運転再開の目処がいまだに立たない、そして、札幌駅周辺はあいかわらず停電のままで携帯もバッテリー切れを心配しないといけない事態になってきた。

午後の早い段階では、翌7日の航空便は運行される予定になっていて、9時台の羽田行きの空席が取れた。おそらくは6日発の7日帰りの人が次々と往復分をまとめてキャンセルしたのであろう、この時点で7日の予約が取れたという話はいくつか耳にした。

しかし、それも夜には欠航が決定、まだ函館からの新幹線は払い戻していなかったので、札幌から函館までの特急を予約した。駅の窓口は停電で開いていないので、ネットからの予約である。ところが、これも明けて7日の早朝、JRは少なくとも午前中は全線で運転見合わせと発表されていた。停電が続いているのだ、信号が使えないのでは仕方あるまい。しかも、新幹線も青森までのまま。函館まで行ってフェリーで青森というルートも考えていたのだが、そもそも札幌から出る手段がないのだ。
 

新千歳空港へ

さて、いよいよ八方塞がりになりつつあったが、新千歳空港のカウンターが開いたという情報が入ってきた。その日の運行状況を確認してみると、午後の遅い便からは運行される見通しである。ひとまず空港に向かおうと決めたが、まだJRは動いておらず、ホテル前の空港行きリムジンバス乗り場はすでに長蛇の列、しかも、並んだところでバスの運転再開の目処は未定という。

すでに羽田など各地から新千歳空港行きの便は出発しており、この後、新千歳発が飛ぶのはほぼ確実な情勢で、一刻も早く空港に向かった方がよい。これはもうタクシーしかないと決意、確か、1万円ぐらいと高速料金と聞いていたので、最悪1人でもとは思ったが、来る予定の立たないバス待ちの行列に、空港のカウンターは再開したみたいです、バスは未定だそうです、どなたか空港までタクシーをシェアしませんかと声をかけてみたら、あっという間に4人になったので、即座にタクシーを捕まえて札幌を後にした。

高速は空港周辺で大渋滞の可能性が高いということで、一般道を裏道も交えてどんどんと進んでゆき、10時には空港に着いていた。タクシーの運転手がこんなに神々しく見えたことはない。予想通りタクシー料金は1万円ほど、高速も使わなかったので、1人辺り2,500円で済んだ。後で聞いた話では、JRの空港行きの運転再開は午後にずれ込んだということなので、タクシーを選んだのは大正解であった。

タクシーはターミナルビルの中央に降り場があるのだが、出発フロアに上がる階段に行列ができている始末。空港内も大混乱であった。タクシーで同乗してきた皆さんはANAとAir Doということで、タクシーを降りたところで互いが無事に帰宅できることを祈りながら別れ、筆者はターミナルビルにJAL側から入った。

そちらの階段は比較的空いていてすぐに上がることができたが、案の定、チェックインカウンターは大行列が何重にも折り返してフロアを埋め尽くしている。なにしろ、前日からずっと欠航していたのだ。カウンターにたどり着けるのがいつになるのか、そして、そこからキャンセル待ちにスタンバイして、果たして、今日中に乗れるのか。

たまたま通りすがった地上職員に聞いてみると、JGCカウンターも開いているということなので、そちらに回ってみると、なんと列に並んでいるのが数人だけ。羽田行きの空席待ちでも今日中には帰れそうな感じであったが、他の行き先で空席のある便はないかと訊ねてみると、30分後に出る仙台行きがあるとのこと。その場で即決して、前日予約した羽田行きを仙台行きに変更してもらった。差額はかからないものの、仙台から先の陸路に関しては自己負担になるけども構わないかと聞かれたが、もちろん、それは承知の上である。ラウンジも開いていないとのことであった。手続きが終わった頃には、JGCカウンターにも長い行列ができていた。

保安検査もJGCエントランスから進むことができて、程なく搭乗開始。いくらか空席を残したまま定刻に出発して、ようやく機上の人となれた。

新千歳から仙台行き


仙台に着いてみると、北海道の大混乱などまるで噓のように世の中が動いており、仙台駅で昼食をとり、新幹線で夕方には東京に戻ってくることができた。今回の札幌行きは結果的にほぼなにもすることができなかった。その日の夜、ほとんど話すことのできなかった札幌の知り合いと、訪問することのできなかった函館の知り合いに電話をして、北海道が観光客を再び受け入れられるようになったら必ず遊びに行くからと伝えた。

なお、帰路のマイルとFOPの積算であるが、前日に購入した新千歳 - 羽田の予約変更なので、運賃種別としては同じ特便割1、この積算率に実際に搭乗した新千歳 - 仙台の基本マイルがかけられたものとなっていた。

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